入れ歯の具合は聞けないけれど
〜Dさんからの依頼〜

Dさんがやって来たのは、もう何年も前になるだろうか。
「入れ歯の調子が悪いので、新しい入れ歯を作ってください。」とDさん。 いい入れ歯を早く作りたいという希望でしたので、保険外の金属でできたしっかりした入れ歯をつくることになりました。
入れ歯をつくるには何回もかかりますが、Dさんは「なるべく早くお願いします。」と何かあせってるようでした。

情を聞いたら、実は癌であと半年の命と宣告されたそうです。 「いい入れ歯をつくって最期においしい物を食べたい」とDさん。
よ〜し、Dさんのためにいい入れ歯をつくるぞ、できるかぎりのことはしようと気合いをいれました。

れ歯は完成しました。しかし、その後入れ歯の調整には来ませんでした。
もしかしてと思いご家族に連絡したところ、急に様態が悪化して入院したのこと。でも何日間かは新しい入れ歯で、好きなものを食べてよろこんでいたそうです。

の後、数ヶ月してDさんは亡くなりました。
Dさんにとって本当によかったのだろうか?
数日間だけのために数十万円の入れ歯は価値があったのだろうか? 悩むDr.島田であった。
<2001.9.11>

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