摂食指導でおいしい食事
在宅診療日記その2
ょうは老人ホ−ムで治療の日。
12時です。昼食の時間です。みんな食堂に集まってきました。Tさんが車椅子にすわっています。
「Tさん、お体の調子はどうですか?」
「……」
「新しい入れ歯の調子はどうですか?」
「……」
Tさんは黙ってこちらをじっと見ています。それも無表情で。
実はTさんは脳梗塞の後遺症でしゃべることができません。また、麻痺のため動くことも自分で食べることもできません。

「きょうのおかずはお魚ですよ。」と細かくきざんだ魚をスプ−ンで口にもっていきます。ゆっくりあいた口にスプ−ンをいれると口が閉じ、新しい入れ歯でゆっくりかんで食べます。介助しながら細かくきざんだ物は食べられるようになりました。

年前、脳梗塞でたおれ、老人ホ−ムにきた時は鼻からチュ−ブを入れらてました。1日中寝たきりで、食事もチュ−ブに流動食を流しこむだけ。まるで植物人間のようでした。口から食べる機能が残っているか慎重に検査し、家族の承諾を得て、摂食治療が始まりました。

の体操・唇や歯肉のマッサ−ジ・舌の訓練・唇の訓練・姿勢・介助の仕方・食物の形態・入れ歯の作成など多方面の治療を根気よくやりました。そしてチュ−ブをはずすことができました。

「ごはんおいしかったですか?」
「……」
あいかわらずTさんは無表情ですが、うれしそうな眼をしていると思うのは私だけでしょうか。
<2000.9.13>

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