診察室から
怖〜い表情で来院したおじいさん。
不安だったんだろうな〜。
Sさんが来たのはとても寒い日でした。待合室の時から怖い顔をしてました。「こんにちは」と声をかけたが返事はなし。気まずいなかで「どうしましたか?」そうすると怖い顔をしたSさんは「歯がぐらぐらして痛いんだ」と。

口の中を見て(なんでこんなになるまで放っておくんだ)と心の中で叫んでしまいました。何本も歯がなく、残ってる歯もぐらぐら。重度の歯周病。「抜かないとだめですよね?」とSさんは深いため息をしながら話をします。

「若い時に歯医者に行ったら歯を抜かれた。そのあと歯医者に行くたんびに歯を抜かれた。」とまるで歯医者が悪いんだと言いたいばかりに不満げに言います。(あなたがどうしようもなくなるまで歯医者に行かないのが悪いんだ)とまた心の中で叫んでしまいました。

の後Sさんは初対面の私に文句を言ったのを気にしだしたのかしょんぼりしてしまった。(この人は物をかむことができず食事は苦労してるんだろうな。今までの歯医者は説明が足りなくて歯医者嫌いになってしまったのかな。でもきょうは勇気をだして嫌いな歯医者にきたんだ。よ〜しSさんのためにがんばるぞ。)と心の中で静かにつぶやいた。

っかり検査をして、抜く歯、なおせる歯を鏡でみてもらい、どうしてこうなったかをやさしく説明し、これからがんばって通ってくだされば義歯をつくり物をかむことができますよ。と話をしました。帰るときSさんからあの怖い顔はなくなっていました。
<2000.4.1>

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