最近高齢者の患者さまが多くなった。多くなったというよりは若い患者さまが過疎化の影響で大幅に減少したというのが正しい言い方かもしれない。高齢者の方はほとんどが何らかの薬を飲んでいらっしゃる。ここ数年は私の街のほとんどの診療所では飲んでいる薬剤の説明書を出している。ところが当の患者さまは自分の飲んでいる薬の名前すら知らない患者さまが大勢いらっしゃる。医科で出されている薬で歯科診療に影響を与えている薬剤はたくさんあるがその代表格が「抗血栓剤」であろう。「抗血栓剤」とは文字通り血を固まりにくくする薬で脳梗塞のような脳血管障害や心筋梗塞などの心疾患の患者さまの血液に塊が出来て再度血管がつまらないように処方するものである。しかし抜歯をした際には血が止まらなくなってしまうので、抜歯の際には休薬するか違うタイプの薬剤に処方してもらう場合がある。
抜歯が予定されていると必ず有病者の場合には主治医に意見を文章で聞くことにしている。一昔まえに何回も手紙を出しても全く相手にしてくれなかった先生がいらっしゃったが今はそのようなことはない。しかし、近所に「パナルジンを服用しているので抜歯は中止しないでください。」と判で押したよな返答をする先生がいらっしゃった。この先生は数年前転勤(ウワサによると左遷?)されたのでこの時ばかりはその先生に悪いがホッとしたのが正直な気持ちだった。 ところが最近困ったことがわかった。先生の返答書には「はい!わかりました。休薬しましょうね!」といった内容の文章であるがいっこうに患者さまへその真意が伝わっていないのである。口頭でただ「パナルジンという血をサラサラにする薬をしばらく飲まないでね!」と一言だけおっしゃった先生もいらっしゃった。仮に患者さまに十分説明しても患者さまがただ単に「はい!わかりました。」と言って全く理解していないケースが多い。 これをお読みの先生の中には「パナルジンは錠剤」と思っている先生が多いかと思う。もちろん医科の先生もそう思っていられる方も多い。(実際5人に聞いてきたら「4人がパナルジンは錠剤のみ」と思っておられた。)ところがレアものであるがパナルジンの粉末(顆粒)が存在するのである。しかもある病院で処方された薬を見ると何種類かの粉末の薬剤が混じっている。これなら一体どうやってパナルジンを休薬するのであろうか反対に教えてもらいたいものである。 「パナルジンを飲まないでください。」と説明すると「ハイ!わかりました。」と元気に答えるが実際には休薬しない方もけっこういらっしゃる。私は抜歯の前に患者さまに「抗血栓はどれですか?」と聞くことにしている。すると「めんどうだから、休薬しなかった。」と答える人が実は結構多い。仕方がないので事前にどれが「抗血栓薬」か服用している薬剤を実際に診療室に持ってきてもらって確認している。しかし、最近ではジェネリック医薬品が幅を利かせてきたので、どれが止血剤なのは簡単にはわからなくなってしまった。 でも、真の問題はこれだけではない。先日も近所の公立病院であったが内科と外科で降圧剤を処方し、1日量も間違った上に同じ作用だが名前の違うジェネリック医薬品を出したので、薬剤師のチェックをスルーしてしまった。しかも、その後の応対が悪かった。降圧剤の飲みすぎで倒れたのに他の医療機関で出した薬が問題だといってロクに取り合わず、患者の家族が警察に訴えてしまったのだ。 みなさんはこれで大事になるとお思いだが、患者さまが亡くなったり、重大な後遺障害が残らない限り警察はこういった事故には意外なほど淡白なのだ。なんでも、民事不介入の原則で話し合いで解決できることはせいぜい院長に注意して終わりになってしまう。しかし、歯科とはいえ「私は知りませんでした」では世の中は通用しないと思う。 いずれにせよ、薬との戦いは果てしなく続くのである。 |
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| <2009.6.16> |
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