僻地に生きる歯科医
モンスターペーシェント
日ある地方紙に「モンスターペーシェント」について新聞記者が記事を載せていた。この記者は記事の中で「医療従事者が患者を怪物呼ばわりするのはさすがに言いすぎの感がある」と言っているが、「モンスターペーシェント」は医療機関にとっては切実な問題である。さらにこの記者は、「病院経営者の中に患者側の利用意識の高まりとモラル低下が原因との声があるが、果たしてそんな単純な話なのか」と疑問を投げかけている。

かし、ここでいう「モンスターペーシェント」とは、いわゆる「クレーマー患者」とか「何を言ってもわからない(わかろうとしない)患者」とは少し意味が違うようだ。この新聞によると、「少しの待ち時間でも遅いと怒鳴る」「お金があっても診療代の支払いを拒む」「病気が回復しない腹いせに暴力を振るう」などが特徴と述べられている。

れから数日後、今度は別の地方紙に「モンスター・ペアレント」の話が出ていた。何でも、無理難題、勝手わがまま放題を学校に要求するそうだ。ところでこういった「モンスター○○」は、学校や医療の現場だけではないそうだ。

日、警察から「ご遺体を見て欲しい」という要請があったので警察署へ出かけた。帰りに母親と警察官が怒鳴りあいのケンカをしているのを目撃した。聞いていると、この母親は息子が自転車の窃盗で補導されその息子を引き取りに来たのだ。母親は、以前自転車を盗まれたことがあり、その際は警察に届けを出したが結局犯人はわからなかったと訴えていた。そこで、「私の自転車を盗んだ犯人は捕まえないで、どうして私の子供だけを捕まえるのか?」と言って抗議をしているのだった。自分の息子が窃盗をしたことと、自分の自転車が盗まれたことは別問題であるが、どうやらこの母親はこの論理では納得できなかったようだ。あまりの母親の迫力に、さすがの警察官も対応にとまどっていた。

て、私の診療所でもこういったケースが少なくない。たとえば、予約に遅刻をした時など「すみません」と一言いえば済むことであるが、多くの人は黙って受付に予約券を出す。注意をするとほとんどの方が、無言か無視だ。それどころか、「仕事でいそがしかった」から当然だという態度の人も多い。そんなときスタッフは、「こっちだって、仕事だ!」と言うのだそうである。まるで「仕事!」が理由なら何をしても許されると言わんばかりだ。こっちの仕事の都合を変えることに自分の仕事の都合は理由にならないと思うのは、彼女だけではないと思う。

れどころか、休日や時間外に受診する患者さまは、なぜか保険証を持っていなかったり、切れた保険証を持ってきたりする。また、かなりの割合でサイフを忘れてくる。こういった患者さまに限って、次回の予約をとりながら来院しないケースが多い。仮に来ても、途中で診療を中断するケースが多く、最後まで治療する患者さまはほとんどいらっしゃらない。こういうケースの患者さまに電話をすると、治療を中断する理由として「もう来るつもりはありません」とか「他の医院へいきます」という方が多いが、結局実際には「それでは次回行きますので予約をお願いします」とおっしゃる方がほとんどなのである(もちろん、ほとんど全員が予約をとって来院しないのである)。

ういえば、治療費の滞納者は、最近ではほとんど「明日、全額払います」を繰り返すそうだ(結果はご想像の通りである)。まるで「暖簾に腕押し状態」なのである。(これも「モンスター○○」の一種なのだろうか?)

の地方紙では、最後に記者が「医療現場に飛び込み医師と患者双方から本音の声を聞きながら問題の根源を探っていきたいと思う」と文章を結んでいる。果たして、我々と患者さま双方の本音を聞きながら根源をさぐると解決する問題なのだろうか?と、私は真剣に考えてしまった。
<2008.3.14>

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