当地における身体の不自由な子供たちの治療事情(1)

体の不自由な子供たちを治療すると、母親たちから様々な質問が来る。一番多いのが「私の知り合いの○×さんは△□町に住んでいるのだけれど、近くに体の不自由な子供を見てくれる歯科の先生はいらっしゃいますか?」である。残念ながら「どうしたらムシ歯や歯周病の発生・進行を予防できますか?」と言う建設的な質問はない。

の町にはこういった子供たちを受け入れる幼稚園等はないので近くの大きな町へ通うのであるが、私の町から単純に往復するだけで100km以上離れている。夏なら良いが冬は大変だ。

の中である女の子が私の診療所へ通っている。この子も何件か歯科医院を回って私の所へ来た。話を聞くと、最近では真正面から「身障者お断り」という診療所は少ないそうだ。その点は良いことなのだが「建前は受け入れるが、本音はダメが多い」そうだ。

約すると「半年先まで予約が一杯だ」とか、「希望する時間はどういう訳か一杯」に始まって仮に受け入れても「単にムシ歯にサホライドを塗るだけ」とか「ちゃんと自分で治療出来る様になってからにしましょう」等とまともに応対してくれないのが大部分だそうだ。さらに次回の予約が1ヶ月以上開いたりして「もう来ないでほしい」と言う態度がミエミエの経験も相当したそうだ。そう言う訳だから、かえって「身障者お断り」の方が患者の家族にとっては良いとまで言われてしまった。

て、はじめのうちは治療を怖がっていたこの子もだんだんとスタッフと仲良くなるにつれて、積極的に来院してくれる様になった。最近では自分でユニットまで歩いて来るまでになった。

ころがこの子が通っている施設でちょっとした異変があった。なんでも通っている子供たちが増えたので、昼食後行っていたブラッシングを廃止するらしいのである。(こうした合理化は、こういった施設では決して珍しい事ではないらしい)当然のことながらこのお母さんも反対した。施設側は「それでしたら自分で勝手にやって下さい」との返答だったそうだ。そこでこのお母さんは自分で食後のブラッシングをしたそうだ。そのせいもあってその子のプラークコントロールもその後比較的順調に経過した。

療終了後も3ヶ月おきにリコールへもやって来る。来るたびごとに成長し、筋力もついて来た。足腰もしっかりして来たし、我々スタッフに挨拶も出来る様になった。

「お母さんによって子供も良くなるし、悪くもなる」というたとえがあるがこのケースはお母さんによって良くなったケースである。

の子がリコールに来る度ごとに「ああ、歯科医師になって良かったなあ」と思える一瞬である。
<2002.1.9>

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