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取材でお邪魔したのをきっかけに、ここ数年、懇意にさせていただいている干物屋さんが島根県・浜田市にあります。
中国地方の日本海側、島根県西部に位置する浜田港は、知る人ぞ知る、山陰有数の名港。浜田沖を中心とした山陰沖西部でとれる、質の高い魚介類が水揚げされることで知られています。
中でも名高いのが、“どんちっち”というブランドを冠する、アジとカレイとのどぐろ(アカムツ)。この3種については、漁協がサイズや脂質含有量を厳しくチェックし、規格に達したものにのみ、ブランドを名乗ることが許されているのだそう。その豊かで新鮮な海の幸を惜しげもなく、干物に仕立てているのが、「河野乾魚店」さんです。
これまでも近所のスーパー、デパートの干物はもとより、取り寄せ企画などで、全国各地の銘品といわれる干物を食べる機会も何度かあり、どれもそれなりに“おいしいじゃ〜ん”と思っていたのですが、「河野乾魚店」さんの干物を初めて食べた時は、格の違いに思わずアングリ。絶妙な塩加減といい、たっぷり脂ののった魚のうまみといい、焼きたてを口にすれば、“あっふ〜ん”と身をよじりたくなるほどのおいしさ! たかが干物とあなどるなかれ。その逸品たちは、「干物って保存食のように思われていますけど、干し上がってすぐがおいしいんです」というご主人のこだわりで、できたてになるべく近い鮮度を保つため、干し上がり後、すぐにマイナス27℃で急速冷凍。その上で各地に発送されます。
というわけで、以来、折にふれ、自宅に取り寄せたり、おつかいものにしたりしている次第ですが、その「河野乾魚店」さんから、「ハタハタの一夜干しができましたよ!」とメールが届いたのは、2月末のことでした。
ハタハタといえば、秋田の冬の味覚“しょっつる鍋”などで知られていますが、「山陰では、春が旬で、春になると水揚げ量が増えおいしくなるんですよ」とのこと。へ〜、そうなんだ。となれば、早速取り寄せてみなければ!
そして注文の翌日、早々に届いたハタハタは丸干しで、ちょうど手のひらくらいのかわいいサイズ。さてさて、焼き網を充分に熱くし、河野さんのご指示通り、冷凍のままのハタハタを乗せて焼き始めると…。みるみる間に滴り落ちる脂、立ち上る香ばしい匂い。表面は飴色につやつやぷっくり。こりゃ、たまらん!
焼きたてをほおばると、臭みもなく、芳醇な脂としっとりとした身が溶け合い、なんとも絶妙な味わい。いやはやハタハタで、お口の中は初春の風がひらひら。「沼津、房総、小田原…。いいえ、浜田、浜田です!」とローマの休日のアン王女よろしくつぶやきながら、これから春を待つ楽しみがひとつ増えましたとさ。
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