味彩通信
Vol.65-2006.12
芋の子会

 里芋のおいしい季節です。「芋煮」は日本全国にある風習のようですが、東北では山形の「芋煮」が有名ですね。秋の野山に繰り出して、河原などのにわか作りの炉で鍋の底を真っ黒にして「芋煮」を作り、飲んだり食べたり、といういわば和風アウトドアクッキングなのです。

 私のふるさと岩手県水沢地方のそれは「芋の子汁」と言って、醤油味で鶏肉・ゴボウ・長ネギ・きのこ類・こんにゃく・豆腐そして「主役」の里芋がはいったものです。鶏肉とゴボウ・きのこ類・里芋から出ただしが上品な旨みの汁を作ってくれます。
 おいしくつくるコツは「鶏肉を水から煮る」こと。煮立ったところでアクを丁寧にとると鶏肉独特の臭みも消え、柔らかく煮えます。里芋が柔らかくなったらこの鶏肉を汁ごと加えるとおいしいだしと柔らかなお肉が味わえます。

 高校時代、街の近くを流れる北上川や胆沢川の河原に繰り出して、クラスの行事として「芋の子会」をしたものでした。当時、秋ともなれば職場やスポーツの同好会・老人クラブ・町内会・趣味の会などあらゆるグループが「芋の子会」を計画して、川原ではそこここで炊さんの煙があがっていたものです。「今年は五回参加した」とか言って、交友関係の広さを自慢する人もいたものでした。
 最近は「忙しい」せいもあるのでしょうか、ホテルの「芋の子会プラン」等を利用してちょっとした「飲み会」で済ませているようです。

 例年この季節になると、水沢では「ジャンボ芋の子鍋」といってこの地方の特産品の南部鉄器でできた直径3.5メートル、重さ5トンの大鍋で6,000人分の「芋の子汁」をつくって市民にふるまうお祭りがあります。野菜もきのこも地場産。里芋はもちろん水沢産、北上川東岸の砂地でとれた、特別おいしいものです。
   実りの秋を祝って紅葉を見ながら一緒においしい物を食べるという、いわば「農作業のごくろうさん会」のようなものです。里芋のぬめりには「ムチン」という成分があって、消化促進、肝機能・腎機能の助けとなるそうです。また、里芋の豊富な食物繊維は便秘解消のお役にも立つとか。

 岩手は「芋の子会」のシーズンが終わるころ、初雪が降り、いよいよ冬支度となります。「芋の子汁」の里芋や野菜を食べて体も冬支度するのですね。

 今回は里芋の意外な食べ方をご紹介いたします。

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及川喜久子

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