味彩通信
Vol.64-2006.11
食の数字

 昨年始めに父が亡くなり、以来、やれ法事だ、お彼岸だ、お盆だと、家族が集まる機会が増えました。お寺でお経をあげていただき、線香や花をたむけ故人を偲ぶひとときは、大人達にとっては一種の安寧をもたらしてくれるものですが、まだわけのわからない4歳と1歳半の甥っ子たちにとっては、おもしろくもおかしくもないイベント。

 でも、亡くなってしまったおじいちゃん、そしていずれはおばあちゃんやおばちゃんを供養する気持ちを小さいうちから仕込んでおきたくもあり、「いい子にしてたら、お墓参りのあとにはいいことがあるよう!」というオプションで釣ろうと、“なむなむ”を済ませたあとは、みんなでおいしいご飯を食べに行くことにしています。

 ところで、私が子どもだった頃は、子連れでちゃんとしたご飯を食べられるところといえば中華料理店ぐらいでしたが、最近は懐石料理店やフレンチレストランなどでも個室を用意して、子ども用のメニューを出してくれるところも少なくありません。

 そこで、せっかくなら自分もおいしいものにありつきたいという下心を持った仕切り屋のおばちゃん(私)は、張り切ってコーディネートをするわけですが、一方で、「私が三十歳を過ぎてから初めて口にしたようなものを、ウチのちびっ子たちは、たいしてありがたがりもせずに、ほいほい食べて、まぁ、今どきの子どもはな〜んていいご身分なんでしょ」などとも思っていたところ…。最近、服部栄養専門学校の服部幸應先生に、食育についてお話しを伺う機会があり、ちょっとカルチャーショックを受けてしまいました。

 ここ数年、新聞やテレビでも頻繁に取り上げられている、朝ご飯を食べてこない子どもや、給食費を払わない親の話などは、それなりに関心を持って見ていたのですが、服部先生のお話によれば、想像をはるかに上回る実態。

 人間は普通に生活していれば、1年間に1095回食事をするチャンスがあるわけですが、そのうち親子が共に食卓をかこむ回数がものすごく減ってきて、少ない子はなんと50回以下!

 これって、1カ月間に90回以上もある食事のうち、7回しか親とご飯を食べてないってこと?

 会社や学校で食べる昼食の分を差し引いたとしても、あんまりです。

 服部先生曰く、「これでは親子のコミュニケーションはもちろん、しつけもなにもあったものではない。子どものしつけというのはほんの小さいうちから繰り返し、繰り返し教え込むことが必要です。途中で軌道修正しようとしても、それまで好き勝手が許されてきたのに、突然禁止されたりするとキレてムカつく子になるんです。食卓というのは食事のマナーだけでなく、すべてのしつけにおいてうってつけの場なわけですが、これが失われつつあるのは大変なことですよ」。

 そしてもうひとつ服部先生が憂えいているのは、パン食に偏った食事。日本の伝統食などもうすたれてきてると思われている方も多いかもしれませんが、どっこい人間の体のシステムというのはそうそう簡単に変わるものではないのだとか。

 たとえばこんなデータがあるのですが、ハワイの日系3世の方たちは、ネイティブのハワイアンより6.4倍も糖尿病にかかりやすいのだそうです。1世、2世の方たちは食習慣として日本食というものをある程度とっていますが、3世になると文化的にもほとんどネイティブと変わらなくなってきます。でも人間の体の構造が、風土としっかり合うようになるまでは200年かかるのだそう。欧米人と同じような食生活をすれば、不調をきたしても不思議はないというわけ。う〜ん、“美しい国・ニッポン”は、まず食の改善からかも…。
佐伯明子

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