味彩通信
Vol.56-2006.1・2
台湾的歓待

 昨年末、10年ぶりに台湾を訪れました。この10年の間に、かの地は大きな地震などにも見舞われましたが、以前にも増して、びっくりするほど高いビルがバンバン建ち、まさに建設ラッシュ。市内はたくさんの車と人が行き交い、活気に溢れていました。

 さて、今回の旅の主旨は、あいも変わらず“食い倒れ”。なにせ台湾は、数多くの屋台がそこかしこにあふれ、また昔ながらの市場や、深夜ににぎわう夜市がひしめいているのです。当然、鼻息も荒くなろうというもの。

 まずは台北市の西側にある龍山寺へ。ここは台北で最も長い歴史を持つ古刹ですが、なによりこの辺りには、「華西街観光夜市」や「西門市場」、「三水街市場」といった私好みの見所がいっぱい。さっそく目に止まったのは、屋台の軒先で大鍋いっぱいに煮えたぎっているスープらしきもの。メニューはどうやらそれひとつらしく、指を1本立てて注文すると、店の女性がプラスティックの小さなお椀に、なみなみと注いでくれました。値段は日本円でおよそ40円くらい。受け取ってれんげでザッとかき回すと、5cmくらいにブツブツ切れたそうめんのような麺の間に、モツの端っこらしきものやちっちゃな牡蠣らしきものなどを発見。当方、中国語はまったく話せないため、なにが入っているのかを尋ねることもできず、すべてが“らしきもの”としか認識できないのが情けなく、しかも限りなくデンジャラスな感じがしないでもないのですが、連れと顔を見合わせ、とりあえず口に入れてみると、とろりと熱く、ずるずるとすするとこれがなかなかのお味。ほっほう。

 次は市場でXO醤という調味料を購入。干し貝柱やえびがたっぷりつまっているのが瓶の外からもうかがえ、にんまりしていると、隣の店から派手な化粧をほどこした女性が飛び出してきて、「チョットマッテ、マッテ!」と呼び止められました。「こりゃマズイ!」と肩からかけたバッグをひしとたぐり身構えていると、女性に手を引かれてやってきたのは小さなおばあさん。「ありゃ?なんぞ押し売られるのか?」と再び身をかたくしていると、「コレ、アケタラ、レイゾウコ、イレナイトクサル、ダメネ」とおばあさんにっこり。よく聞けば“傷みやすいから、開封したら冷蔵庫にいれなさいね”と、親切な助言をしていてくれたのでした。

 実は、今回の旅ではこうした親切なおばあさんやおじいさんにたくさん御世話になりました。とあるお茶屋さんでは、「中国茶はいい加減なものでも、熱いうちはそれなりに飲めるのですよ。ぬるくなってからでもおいしいのが本物。人間もそうです。時間が経ってぬるくなっても、いいものと感じられるのが本当の人のつながりというものです」と、高齢のご主人がやさしく言いながら、おいしいお茶をごちそうしてくれました。

 台湾がかつて日本の統治下にあったのはご存じの通り。片言ながら今でも日本語を話せる人がたくさんいます。日本に対しての思いは複雑でしょうが、はるばるやって来た日本の旅行者に対するもてなしは、本当にほっこりとあたたか。素晴らしきかな、台湾的歓待(ホスピタリティ)! 一年をしめくくるにふさわしい、ヒューマンな旅になりました。

佐伯明子

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