味彩通信
Vol.55-2005.12
白菜食べつくし作戦

 暖かな秋の日が続いて、今年の紅葉は色が「鮮やかさ」に欠けるとのニュースに納得。しかし、ここ2日ばかり寒気が流れ込んで我が家の西方に連なる奥羽山脈もやっと雪を頂いた。

 私の暮す岩手県水沢地方では、例年この季節になると漬物用の大根と白菜が店頭に並ぶ。大根は沢庵用に干して10本一束、白菜は10個一袋でビニール袋に入って売っている。ご多分にもれず、近年はひと冬分の白菜漬けを作る家庭は少なくなった。大きな樽に四つ割あるいは二つ割にした白菜を重ねて漬け込み、春までの保存食とした。この昔ながらの方法だと、春先残った白菜漬けが気温の上昇とともに発酵が進み「酸っぱく」なってくる。これを刻み、魚のあらとともに酒粕で煮る。
 水沢地方ではこれを「なっぱ煮」と言う。我が家では祖母が宮城県気仙沼の出身だったのでこれを「あじゃら」と呼び「メヌケのあら」を使って煮ていた。祖母の大好物だった。
 想像してください。漬かりすぎて発酵が進んだ白菜漬けとメヌケのあら、そして酒粕を一緒に煮たときの匂いを・・・・・。子どもの私は一箸を付ける度胸もなくてただただその匂いに圧倒されたものだった。くさいけど病みつきになる味だったようだ。捨てずに食べる、物を大切にする心が生きていた時代だった。

 農家の婦人たちの料理講習に行ったときのこと。古漬け白菜の利用法はないか? との質問があった。「刻んで絞ってチャーハンにするとおいしいですよ」と教えてあげたら次の会の時「普段、白菜の漬物に見向きもしなかった孫たちがこのチャーハンを争って食べた」とのこと。「孫どころか息子夫婦も、うちの白菜漬けは食べないくせに買ってきたキムチを喜んで食べている!」と老婦人のグチが出た。「あ、だったらキムチ漬けをつくりましょうよ!」との、私の提案にのったおばあちゃん達が自家製の白菜で本格キムチを作ったのです。その出来ばえに「産直で売るべ」と意気が上り、おばあちゃん達の「ほまじ(お小遣い)稼ぎ」がスタートしたのです。

 今回は生産者の方達とトライした「お鍋ひとつでつくる白菜のクリーム煮」をご紹介します。

白菜のクリーム煮 レシピ
及川喜久子

及川喜久子さんのプロフィールはこちら


INDEX