 |
男性の胃袋わしづかみ、といえば「おふくろの味」と相場が決まっていますが、私はコレに「ふるさとの味」が加わるのではないかと、最近秘かに思っているところ。もちろん女性にも郷土愛はあるのですが、男性の方がより、昔から食べ慣れた物に対する執着が強いような気がします。
ちょいと水を向ければ、「いや〜、太平洋で育った魚はのびのび育ってるからね」だの「日本海の魚は荒波にもまれているから身のしまりが違うんだよ」だの。「知名度こそお向かいに譲るけどね、香川の桃も負けてないよ」とか「壱岐のウニは味が濃くてね、日本中でいちばんうまいんじゃないかな」などなど、まるで子どもが自分のおもちゃを自慢するかのような、なんとも微笑ましいおらが味自慢が始まります。こういうときには「そう、それはおいしそうねぇ」と、優しく相づちを打ってあげるのが女性のたしなみというもの。間違っても「でも、○○で食べたのは…」なんて口をはさんではいけません。
と普段から、男性にはかように心をくだいているつもりの私なのですが…。先日、他意なく「讃岐うどんっておいしいよねぇ」などという話を仲間内でするともなしにしていたら、一角から「待った!」という鋭い声。「讃岐うどんなんて固いばっかりで、そんなにうまいもんじゃないと思うよ。ウチの田舎のうどんはね、こう喉ごしが良くて、つるんとなめらかでね…」と、水を向けるまでもなくとうとうと語りだしたのは、普段は無口な群馬県出身のI氏。あまりにも私が讃岐うどんをほめるので、なんとなく面白くなかったのですな。その後も、そのうどんがいかにうまいかという話が延々と続き、で、そこまでおっしゃるのなら喰わせてみぃ、と日帰り試食会と相成りました。
車を飛ばして訪れたのは、温泉で有名な群馬県伊香保町。こちらの名物のひとつがI氏が自慢するところの“水沢うどん”です。水澤観世音の門前には、それぞれ元祖や始祖、本家などの看板を掲げた専門店がずらり。
まずは始祖を名乗る「清水屋」へ。ざるの上にはつややかな平麺。透明感のある柳腰といった風情の麺を、特製のすっきりとしたごまだれにくぐらせて、ズズッとひとくち…。「うまいじゃん!」。どうだ、どうだ光線を放っていたI氏、自慢げに鼻の穴を広げてニヤリ。
お次は元祖の「田丸屋」。こちらの麺の断面はほぼ真四角で、たれはしょうゆとごまの2種。ごまだれは「清水屋」に比べるとやや濃厚です。これまたぷっちりとしたかみごたえのあるうどんによくからみ、別のおいしさ。
こうしてお互い満腹満足のお腹をさすりながら帰路に着いた私たち。まぁ、結論からいえば、水沢うどんには水沢うどんのおいしさ、讃岐うどんにはまた別の魅力があると思うのですが、ここはやはりI氏の顔をたてて水沢うどんに軍配をあげておくのが、たしなみというものでしょうか?
|
 |